研究開発職が環境安全衛生職を兼務するまで
化学工業系の会社に入社し、化学工業だなぁ、と思っていたら最先端ICT関係の研究開発及び製造業務を行うことに。
就職氷河期だったので、「企業相手の製造会社に就職したい」という要望が叶ったので、それは幸せでした。
最終面接でも「何か希望する仕事はありますか?」と聞かれて「所属した部署で成果を上げることに注力するので、希望はありません」と答えたので、配属先に対しては異論ありませんでした。
会社員であっても自営業であっても、仕事をする上で大切なことは「顧客満足度」を気にすることだと考えます。
私は会社から「空を飛べ」という指示があれば空を飛びます。ただし、法と命は守ります。大事なことは「何のために『空を飛べ』と指示を出されたのか」ということ。顧客の求めるもの、仕様であったりスペックであったり。それを満たせばどんな「空の飛び方」であっても指示に対する成果を出したと考えます。
それがジャンプするだけでも、飛行機に乗るだけでも、パラグライダーでも、バンジージャンプでも。顧客が満足する「空の飛び方」さえすればいいのです。
と、話が少しずれましたが、研究開発時代はそんな感じで顧客の求める製品開発を行っていました。私たちが「良い」と思っている製品でも、市場に出回らなければ製品が世の中で活躍しない。信念は曲げない方がよいと思いますが、顧客の満足する製品に仕上げることも、研究開発者にとって大変重要な能力の一つだと考えます。
で、そんな研究開発時代からの転機が製造部門への転属。
ずっと製品作りに邁進していたところにきて「環境安全衛生関係の業務を行ってくれないか」という依頼(会社でいう依頼=指示、と思っています)を受けました。
何だかわからないまま「はい」と答えました。ここからが環境安全衛生関係の戦いの始まりでした。
まずは排水関係。研究開発のために間借りしていた生産装置とだけ向き合ってきた私が、設備(ユーティリティ)を覚えるところからスタート。プラントの図面を読む日々。バルブの図すら分かりませんでした。
そして法律という大きな壁。そうです、公害防止管理者にならなければならなかったのです。合格率20~30%の国家試験。しかも年1回のみの試験。絶対に負けられない戦いに放り出されました。必死としか言いようがない勉強をして、ようやく水質一種を取得。ついでに、ということで大気一種も取得。
次は安全衛生。こちらも法律に基づきます。衛生管理者第一種。こちらも試験。資格を取得することも大事でしたが、同時にこの勉強によって従業員の仕事環境はさまざまな法律によって細かく規定されている、ということを知りました。まさかトイレの数まで指定されているとは。そんなこと、研究開発時代に知るはずもなく。
最後は、というかこれが最初だったのですが、ISO14001。これは法律ではありませんが、要求事項を満たさねば承認されません。
下記の本を穴が開くくらい読みました。そして部内の各種書類とISO14001を紐づけていきました。
いつの間にか研究開発職から環境安全衛生に対して、一通り理解できる能力を得ることができました。
私はこの能力を得られる機会を与えてくれた会社に感謝しています。なぜなら実業務を行いながら資格を取得できたからです。これだけの業務を行えるようになれば、どの会社や部署に変わっても、ある程度の自信をもって仕事ができると考えるからです。
何が将来の仕事に役に立つか。そんなことは誰にも分かりません。自分自身にも分かりません。でも、言えることは「今持っている能力を適切に発揮すること」「持っていない能力があるのであれば、習得すべく努力を重ねる」。当たり前のことですが、そんな当たり前が結局は役に立ちます。